世界のどこかで、交通事故によって、誰かが亡くなっています。交通事故は人類の死因の第8位、130万人。
毎年毎年、国ごと、町ごと消えてゆく。それほどの数のいのちが交通事故で失われています。
交通事故死者 | 2636人 |
重傷者 | 約2万7千 |
負傷者 | 約36万人 |
交通事故件数 | 約30万件 |
日本では年間30万件以上の交通事故が起きていて、2000人以上が命を落としています。交通事故は被害者と加害者の人生を一変させ、社会の損失もとても大きいものです。
飲酒運転死者 | 122をゼロに |
飲酒運転事故 | 2600件をゼロに |
飲酒運転違反者 | 19000人をゼロに |
日本で起きる交通事故は毎年30万件。このうち飲酒運転事故は2000件、死者は120を超えています。
飲酒運転検挙数は年間約2万件。これは氷山の一角です。飲酒運転をする人・している人はこの数倍、十数倍いると考えられています。
・アルコール検知器の歴史
・血中濃度と呼気中濃度
・呼気アルコールセンシング技術
・アルコール検知器技術規格
・デジタル認証技術との融合
・スマートフォンとの融合
・クラウドネットワーク技術との融合
・アルコールインターロック技術
・運転免許証リーダー
・トライブレコーダー
・デジタルタコグラフ
・疲労運転モニタリング機器
飲酒運転をはじめとする危険な運転による被害者をゼロにする。そのためにはテクノロジーの活用が欠かせません。
特に昨今、インターネットやデジタル技術の進展によりアルコールチェックや点呼システム等、安全運転や運行管理はデジタル化・ICT化が急速に進んでいます。
わたしたち東海電子は、事故防止テクノロジーのうち、飲酒運転防止テクノロジーに特化した企業です。
アルコール検知器が発明される前、警察官は、ニオイや顔色、歩行、挙動など、自分で判断しなければなりませんでした。
クルマの発展とともに飲酒運転の規制がはじまったアメリカでは当初、血液や尿で飲酒有無を測っていたようです。
1927年 Emil Borgen博士は、サッカーボール大の空気袋(いわゆる風船)に硫酸と二クロム酸カリウムを入れ、血液と呼気に対する相関を調べるという実験を実施しました。
呼気袋に吹き込むと、呼気中のアルコール成分によって色が変わることを利用して濃度を出すというものでした。しかし、この状態ではまだまだ路上で実用されるまでは至りませんでした。
”THE DIAGNOSIS OF DRUNKENNESS A QUANTITATIVE STUDY OF ACUTE ALCOHOLICINTOXICATION”
Borgen博士が1927年に公表したこのレポートからは、当時のクルマ社会、飲酒運転規制、アルコール検査技術の状況が窺えます。この論文により、呼気中アルコール濃度が血中アルコール濃度同等の指標であると認知されるようになりました。
これが ”呼気中アルコール濃度測定” の歴史の始まりとされています。
写真提供: インディアナ大学アーカイブズ(米国インディアナ州ブルーミントン)
Borgen博士以後、各州の警察でアルコール検知技術が研究されていました。1936年、インディアナ大学の生化学者Harger博士は、「Drunk-O-meter」と呼ばれる機器を開発し特許を取得しました。
人が息を吹き込む風船を使用し、人が酔っているかどうかを測定するための最初の実用的な呼気検査機器でした。
第一世代のアルコール検知器 と言われています。
Hargar博士は、酩酊状態を化学検査で証明することの証拠の使用を合法化し、運転者の体内アルコール濃度の制限を設定するモデル法案起草にも貢献しました。
写真提供: インディアナ大学アーカイブズ(米国インディアナ州ブルーミントン)
Borkenstein 教授は、Harger博士の開発したDrunk-O-Meterを改良し、 呼気中のアルコールを測定するための最初の実用的なアルコール検知器を発明しました。Drunkometer は化学実験的な形状であり、また、場所を移動するたびに再校正が必要でしたが、Borkenstein教授の開発した機器は携帯性に優れたものでした。このあと、1960年代初頭にかけて、より合理化された、科学実験室のような外観のない呼気検査器に取って代わられ、ロードサイドでの飲酒取締りが多く行われるようになりました。
Borkenstein 教授が開発した、アルコール検知器は、”Breathalyzer”と商標登録され、広く流通しました。解析にも電子が使われはじめ、第二世代アルコール検知器とされ、その後のアルコール検知器の歴史の確かな源流となりました。
Borkenstein によって作成された飲酒検知器は、その後、モデル 900、900A、900B、およびマイクロプロセッサ制御で赤外線吸収方式のモデル 2000へと進化してゆきました。
1955 年から 1999 年の間に、Borkenstein のさまざまな型式のアルコール検知器 が、30,000 台以上製造され販売されました。米国、カナダ、およびオーストラリアにおいても長年にわたって使用され、警察等の行政当局が使う標準的なアルコール検知器であり続けました。
1974年、米国のNHTSAはその後、アルコール検知器の認定制度および承認済み製品リストを策定し、公表しました。
”Highway Safety Programs; Conforming Products List of Evidential Breath Alcohol Measurement Devices”
https://www.nhtsa.gov/sites/nhtsa.gov/files/documents/2017-23869.pdf
写真提供: インディアナ大学アーカイブズ(米国インディアナ州ブルーミントン)
Borkenstein のアルコール検知器以来、後進のものたちが、この機器・技術を進化させてきました。今日、個人用、企業用、プロドライバー用と、使われる場面も増えてきました。そして、目的に応じて、赤外線分析方式、燃料電池(電気化学式)センサー、半導体ガスセンサー等、さまざまなセンシング技術や解析技術も増えてきました。
呼気アルコール技術の進歩により、1970年代後半から、アルコール・インターロック装置としてもつかわれるようになりました。
呼気アルコール検知技術の進歩は、これまで見逃されていた飲酒運転や警察官による不正な見逃しをなくすことができる「客観指標」として、多いに交通社会に貢献してきた歴史があります。その歴史に貢献した数多くの科学者・生化学者・研究者がいました。
Harger氏やBorkenstein氏は、実際、呼気アルコール分析の技術を確立しただけなく、飲酒運転の規制強化を政府に働きかける等、呼気アルコール濃度の法的位置づけにも多大なる貢献をしました。
なかでもBorkenstein博士は、現在IACT(International Association Chemical Testing)において、学術研究賞「ボルケンシュタインアワード」の創始者にもなっています。
このように、生化学分野の研究者の貢献やアルコール検知の技術開発は、時代とともに発展し、今や「アルコール検知器業界」「アルコールインターロック業界」等、飲酒運転防止活動は「産業」といっていいほどの分野になり、交通事故死者ゼロに貢献しつづけていると言えます。
ロバート F. ボルケンシュタイン博士の理想と業績に沿って交通および輸送の安全に関連するアルコール/薬物の分野において、生涯にわたる奉仕を通じて顕著な貢献を果たした個人を表彰するもの。
https://www.iactonline.org/page-1699019
写真提供: インディアナ大学アーカイブズ(米国インディアナ州ブルーミントン)
通常、体内に入ったアルコールは、30分ほどで血液に取り込まれます。本来ならば、測定するためにはこれらの血液を採取する必要があります。しかしながら、血液の採取をすることなく呼気から濃度を測定するため、間接的に濃度換算する法則があります。それがヘンリーの法則です。
ヘンリーの法則
ヘンリーの法則とは物理化学の一般法則で、簡単に言うと、液体中に溶解している物質が空気(蒸気)中にあった場合一定の正比例となる、空気(蒸気)中の物質が液体中に溶解していた場合一定の正比例となる、という基礎理論です。アルコールなどの揮発性物質が溶媒 (血液など) に溶解している場合に気体 (つまり、呼気) 中のアルコールの濃度が、体内のアルコールの濃度に比例すると予測します。
呼気検査の歴史においては、初期の頃から、ヘンリーの法則を用いて伝統的に次の濃度換算式で血中濃度と呼気中濃度を換算することが基本となっています。
「血液1リッターに含まれるアルコール重量÷2100≒呼気1リッターに含まれるアルコール重量」
現在、呼気を吹き込み測定を行うアルコール測定器の大半はこの法則に基づき、アルコールの濃度を測定しています。弊社もこの法則に基づき、換算を行っております。しかしながら、この法則はあくまで近似値であって、絶対値ではありません。実際には、この他にも肺機能の換気量と心臓の脈拍などによって測定値ばらつきが生じます。さらに通常はセンサの感度、使用環境による外的要因によるばらつきなども考慮しなくてはなりません。
現在、センシング方式としては大きく分類すると、半導体方式、燃料電池方式、非拡散赤外線吸収方式(NDIR)、化学反応方式の4種類のものがあります。
具体的な呼気のアルコール濃度のセンシング技術についてご紹介いたします。
センサ方式 | 半導体方式 | 燃料電池方式 | 非拡散赤外線 吸引方式(NDIRI) |
化学反応方式 |
---|---|---|---|---|
ガス選択式 |
△ |
◎ |
〇 |
△ |
精度 |
△ 経年劣化 |
◎ |
〇 湿度、温度、気圧 |
△ |
寿命 |
〇 |
△ 2年~5年 |
◎ |
× 使い捨て |
応答性 |
◎ 5秒程度 |
△ 燃焼時間長い |
〇 |
× |
価格 |
◎ |
△ 高価・消耗品 |
× 精密光学機器 |
× ランニングコスト |
高温に熱した酸化スズ上の空気中の酸素を還元性ガスによって取り去ることによって酸素が持っていた電子が自由電子になり、電気抵抗が変化することを利用した方式。
メリット
1.安価である。
2.小型である。
3.素早い応答性がある。
デメリット
1.センサ自体に個体差がある
2.通電作業(エージング)が必要・・・安定期(*1)まで
3.ガス選択性がよくない(ケトン体特にアセトンに反応してしまう)
4.湿度、および海抜の高いところ(500m以上)などの環境による精度誤差が大きい
5.経年変化が大きく、使い捨てが基本となる
当社では、初期時経年変化(*2)を経た安定期品を利用しています。
呼気中のエタノールを燃料にして、エタノール中の水素イオン(プロトン)と電子に分離して電気を発生させる事を利用した方式。
ダイレクトエタノール形燃料電池センサー
水の電気分解によって酸素と水素が得られるのとはまったく逆の原理になります。
構造は、燃料極(-)と高分子膜と空気極(+)からなり、電極には白金触媒が使用され、呼気中のエタノールを燃料にして、エタノール中の水素イオン(プロトン)と電子に分離して電気を発生させます。
メリット
1.ガス選択性がよく、エタノール以外にはほぼ反応せず、高精度の測定が可能
2.再現性が良い
3.取り込む燃料(呼気)が一定であれば、必ず起電力は一定になるため
4.環境の影響を受けにくい(気圧、結露、には非常に強い)
5.センサの劣化特性が予測できる
デメリット
1.センサ単体の価格が非常に高く、寿命が短い。
2.反応時間が長く、測定に時間がかかる。
全ての気体分子が固有に持っている赤外線吸収帯域(波長)の性質を利用した方式。
メリット
1.直接呼気との接触部分がないため、寿命が長い。
2.ある常温下での精度が高い。
デメリット
1.同一吸収帯域を持つガス成分があり、ある特定の1波長だけではエタノールの識別は難しい。
2.気圧、温度など環境による測定誤差を生じてしまう。(透過率の変化)
3.特に、光検出部等に結露、タバコの煙等で反応してしまう場合がある。
4.非常に高価
5.装置が大掛かり
重クロム塩酸の還元反応を利用した色によるセンシング方式。
メリット
1.価格が安い。
2.小型である。
3.制御用のデバイスが必要ない。
デメリット
1.反応時間が長い
2.再現性および精度は余り期待できない。・・メモリの詠み方に技術がいる。
3.気圧、温度など環境による測定誤差を生じてしまう。・・・反応時間が変るため
4.ランニングコストが高い・・・・毎回使い捨て。
呼気中0.150mg/Lの呼気ガス濃度は、料理用小さじ(5ml)の3分の1を、タンクローリー10車の空気に薄めた濃度に等しい。 このようにアルコールセンサーは、微量のアルコールを検出することができます。
アルコール濃度の算出について
例)0.150mg/Lのエタノールガスを10000L作成一般的な市販の基本エタノールの濃度
濃度ppmは、次式から成り立ち、上記のJIS特級エタノール1.89mlを薄めます。
単位の換算について
重量濃度で表示された市販の標準原ガスの場合における容積の換算は、
v(ml)=100×22.4(273+t)/273×M (Mは分子量、tは気温,測定対象物質100mgに相当する採取容積)である。重量濃度で表示された市販の標準原液の場合における液体容量の換算は、v(μl)=100/ρ(ρは比重又は密度,測定対象物質100mgに相当する採取容積)である。 市販の標準ガス濃度 ppm(μl/l)の重量/体積濃度(μg/l)への換算には、273M/{22.4(273+t)}(Mは分子量、tは気温)を乗じる。それぞれの物質の mg/m3 から ppm への換算は以下のようになります。
ppm≒mg/m3×24.04/分子量(20°C)
ppm≒mg/m3×24.04/分子量(25°C)
=mg/((M/22.4L)*1000L)
・・・・1000L飽和時の分子量に対して、採取した1000L中の重さ
ppm 単位では空気中に存在する当該物質の分子の数を比較できる。
ppmからmg/Lへの換算は
mg/L = ppm×0.001916
アルコール検知器は歴史的に、国家(主に警察行政)による飲酒運転違反者の取締りのために実用化されてきました。
「体内アルコール濃度」や「呼気アルコール濃度」という生理学的な分析は、工業機器を通じて、数値化されます。その際、国家が『単位』として正式採用する場合一般的には「計量行政」と言われ、原則技術規格化・文書化され、公示されます。
アルコール検査機器には国際規格があり、通称「R126」と呼ばれています。
参考:国際法定計量期間 TC17/SC7 Breath Testers
https://www.oiml.org/en/tc-sc-pg/scinfo_view?idsc=45
各国は、基本、国際規格に整合するよう国内規格を企画します。
世界各国でアルコール検知器の技術規格が定められています。
ひとつの国で複数の規格を持つ場合もあります。
<米国 運輸省(DOT)認定>
ALC-PROⅡ(US)というモデルが、DOT(アメリカ運輸省)が規定する『証拠用として使用するアルコール検知器』に合格し、認定一覧にリスティングされています。
https://www.transportation.gov/odapc/Approved-Evidential-Breath-Measurement-Devices
<台湾 CNS15988認定>
ALC-PROⅡが、台湾のアルコール検知器技術規格 CNS15988に合格しています。
<日本 J-BAC認定>
日本ではアルコール検知器協議会の検定制度https://j-bac.org/certified_system/に合格しています
アルコール検知器とは、飲酒運転を防ぐために開発された機器です。昔は単機能でしたが、近年はテクノロジーの進展とともに、アルコール検知器が高度化する一方、その防止威力を無効化するような不正(身代わり等)も高度化してきています。アルコール検知器が、社会に認められる正しい測定機器として認められるには、継続的な技術開発が必要です。
2000年頃、日本のアルコール検知器と言えば、小型で、電池式で、表示するだけのものが主流でした。
当社は、2003年、PCやインターネットを使った業務が普通になりつつある中、システム化されたアルコール検知器を開発しました。デジタルアルコール検知器をPCに接続し、かつ、デジタルUSBカメラで呼気吹込中の写真を撮影し、デジタルデータをPCに保存し、管理する仕組みです。
この仕組みは、アルコールチェックの身代わり行為を防ぐデジタル技術システムとして、今でも当社製品の多くで使われています。
事業所でのインターネットや企業内サーバー導入が進むとともに、アルコールチェックの結果はネットワークサーバーにデータ集約されるようになりました。
企業経営者や管理者は、インターネットと融合したアルコール検知システム導入により、すべての従業員の飲酒検査の結果をどこにいても確認できるようになり、飲酒運転や過度な飲酒習慣への抑止力を高め、安心して経営にあたることができます。
スマートフォンの普及や、Bluetooth技術の普及により、スマートフォンとアルコール検知器を簡単につなげることが出来るようになりました。また、スマートフォンアプリを柔軟に開発することによって、コストを抑えながらも高度な不正防止を実現したり、位置情報をリアルタイムでサーバーに送ることにより、高度な管理が実現出来ています。
クラウドサーバー側で顔認証することにより、より確実な本人確認が出来るようになっています。さらにAIを活用すれば、不正行為や、不正挙動なども検知できるようになるでしょう。
アルコール・インターロック装置とは、呼気アルコール検出技術により、酒気を帯びていない時のみクルマのエンジンを始動させなくするシステムのことです。
2005年頃から、飲酒運転違反者向けにDMV(運輸局)により採用され、再犯防止を実現する技術として、アメリカ、カナダ、欧州、豪州等、世界で普及しています。
日本では、2012年に国土交通省が、福岡の飲酒運転事故の後『アルコールインターロック装置の技術指針』を策定しました。
アルコールインターロックは、車両のスターター信号を制御するハードウェアだけではなく、飲酒検査時のデジタルデータ保存等、高度にシステム化された装置です。
クルマは人が操作するものです。しかし、時に人は、眠くなったり、イライラしたりし、場合によっては道路交通法を無視した運転をします。クルマも長年つかっていると、故障や消耗する部品が出てきます。このように、「ひと」や「くるま」が、路上に出ても安全であることを予め担保する法的な仕組みは、安全運転管理、運行管理、整備管理と一般的に言われ、昨今ではさまざまな先進的な技術が使われることから、『予防安全テクノロジー』と総称されます。
点呼システム、運行管理システム、整備管理システムは、広い意味で予防安全テクノロジーのひとつです。
日本では業務で自動車を使う企業や運輸・運送事業者等プロ事業者は、法令で『点呼』という安全確認行為が義務付けられています。
具体的には、道路交通法施行規則、旅客自動車運送事業運輸規則、貨物自動車運送事業輸送安全規則により、運転前後、または運転途中、ドライバーが疲労や酒気を帯びていないか等の確認が必要です。
2007年頃から、IT技術を活用した点呼が法令で認められるようになったことから「点呼システム」という製品市場が生まれました。
さらに2021年以降、事業用自動車総合安全プラン2025という国土交通省の中期安全政策方針により点呼システムやロボット点呼が制度化され、プロ事業者の運行管理の現場で多く使われるようになりました。
現在、点呼告示第266号により、大きくは2つに分類されています。
1.自動点呼 2.遠隔点呼
いずれも、インターネット、クラウドカメラ、顔認証、デジタル式アルコール検知器等、昨今のICT技術の活用を前提とされており、運行管理の高度化やシステム化は時代とともに進んでいます。
人の体調や疲労は、見た目ではわかりません。特に、業務で運転を使用とする社員やプロドライバーは、会社や同僚に迷惑をかけまいと「体調不良です」とは言えず、場合によっては事故を起こすこともあります。
このため安全運転管理者や運行管理者は、日々社員やドライバーの健康状態を把握する必要があります。特に昨今は、自己申告に頼らず、システム機器を使って体調を見える化し、運行可否の材料にすることも増えてきました。
昨今、技術の進展により、デジタル血圧計とスマートフォンを連動させてバイタルデータを管理したり、すスマートウォッチを使ったバイタルデータの管理が可能になっています。
企業は、健康起因事故防止のみならず、労働安全衛生法、健康増進法、特定保健指導の観点で、事業所で日々の血圧測定を実施したり、企業が社員にスマートウォッチを支給するなど、健康を意識した事業活動が盛んになってきています。
日本では2010年代以降、すべての運転免許証に「非接触ICチップ」が内臓されるようになりました。運転免許証取得や更新時に「暗証番号1」「暗証番号2」を使うことで、運転免許証の表面、ICチップの電磁的・電子的情報が同一であることを気軽に誰でも確認できるようになりました。
2010年より以前は、レンタカー貸し出しや銀行での身分証明として多用されていた運転免許証ですが、偽造運転免許証による違法行為が増え。これを防ぐため、日本国では運転免許証のIC化に踏み切りました。
2014年頃からバス、タクシー、トラック等の自動車運送事業者や安全運転管理選任事業所によって、IC運転免許証リーダーとアルコールチェックシステムと連動させるシステムが普及しはじめました。
今後、IC運転免許証はマイナンバーカードと一体化したり、モバイル運転免許証アプリも出てくるなど、社会のデジタル化とともに国内外で身分証明書として重要なものになってゆくでしょう。
映像記録型ドライブレコーダーとは、事故やニアミスなどにより急ブレーキ等の衝撃を受けるとその前後の映像とともに、加速度、ブレーキ、ウインカー等の走行データをメモリーカード等に記録する装置のことです。これにより事故やニアミスの状況が記録されるため、事故等の映像を利用して乗務員の安全教育へ活用できるとして運送事業者で普及が進んでいます。また、事故処理の迅速化が図れるなどのメリットもあります(国土交通省HPより)。
乗合バス、貸切バス、タクシー、トラック等 自動車運送事業者のうち、貸切バスは全車両にドライブレコーダーを装着する義務及び、ドライブレコーダーを用いた安全教育を行う義務が課せられています。
ドライブレコーダーはカーショップやカーディーラーでも気軽に入手できるようになりました。最近は、クラウドタイプや360°タイプも増えてきています。
このように、ドライブレコーダーは、自動車運送事業者だけでなく、安全運転管理者選任事業所をはじめ業務で車両を使用する企業や、個人でも普通に事故防止のために使う機器となっています。
正式には『デジタル式運行記録計』と言い、車両の運行にかかる速度・時間等を自動的にメモリーカード等に記録する装置です。道路運送法の保安基準で、ハードウェアおよびデータフォーマットの仕様が定められています。
デジタルタコグラフで取得したデータは、メモリーカードやインターネット通してクラウドサーバー上に保存され、管理者は、ドライバーが法定速度、休憩時間などを遵守しているかを容易に確認できます。デジタルタコグラフは、エコドライブ指導や、労働時間(拘束時間、運転時間)の管理や、安全教育にも役立ちます。
現在、アナログタコグラフとデジタルタコグラフ、両方の方式が保安基準で定められています。
乗合バス、貸切バス、タクシー、トラック等 自動車運送事業者のうち、貸切バスにおいては、2024年4月から、デジタルタコグラフの使用が義務付けられます(新車は2024年4月、既存車両は2025年4月から)。
運輸業界が2024年問題を克服するために、運転時間や拘束時間、労働時間を算出しやすいデジタルタコグラフは、さらにひろまってゆくことでしょう。
ドライブシミュレータとは、実際の車を使わずに運転席を模して、擬似的なハンドル・アクセル・ブレーキ・方向指示器等を操作し、実際の運転では経験できない教材(ソフトウェアプログラム)を通して、危険予知トレーニングを行うシステムです。運転シミュレータ、ドライビングシミュレータとも言われます。
ドライシミュレータは運転免許更新時や違反者講習時等道路交通法の免許制度に基づいて使われるものや、教習所の教科として使われるものなどがあります。1画面タイプ、2画面タイプ、3画面タイプ等、大きくは3種類あります。
ドライブシミュレータは、安全運転管理選任事業所の安全教育や自動車運送事業者の安全教育でも多く使われています。最近では比較的簡易的な、ノートPCを使ったシステムも出てきています。乗用車目線、大型バス目線、大型トラック目線等、一般社員やプロドライバーの運転スキルや危険感受性を養うトレーニングとして使われてます。
先進安全自動車(ASV:Advanced Safety Vehicle)は、先進技術を利用してドライバーの安全運転を支援し、事故を防止し、事故時の被害を軽減するシステムを搭載した自動車です。
日本においては国土交通省がASVの普及計画を中長期的に策定し、未来の被害者を無くそうと、補助制度も設けています。
大きくわけて、8つの先進技術があります。
衝突被害軽減ブレーキ
ふらつき注意喚起装置
ドライバー異常時対応システム
先進ライト
側方衝突警報装置
統合制御型可変式速度超過抑制装置
アルコールインターロック
事故通報システム
これらの車両安全技術を導入する際に、国土交通省から導入補助金を受けることができます。
国土交通省、トラック協会等は、アルコール検知器、点呼システム、健康管理システム、デジタルタコグラフ、ドライブレコーダー、ASV等、事故防止対策として有効なシステムに対して 補助制度を設けています。詳しくは、以下 特設サイトをご確認ください。